固定費はいくらまでなら安心?——金額ではなく「手取りに占める割合」と家計の余力で考える

「固定費は月○万円までにすべき」という数字を探して、この記事にたどり着いた方も多いと思います。

先に結論から言うと、固定費の安心・不安は、金額だけでは決まりません。
まず見るのは「手取りに対してどれくらいの割合を固定費が占めているか」、そのうえで「固定費を払ったあとに、いくら残っているか」です。

金額そのものより、この二段階を確認したほうが、自分の家計を判断しやすくなります。

固定費20万円は高い?それとも普通?

たとえば、毎月の固定費が20万円だったとします。

これだけを聞くと、「高い」と感じる人もいれば、「そんなものでは」と感じる人もいるはずです。
感じ方が分かれるのは当然で、手取りがいくらかによって、20万円の意味がまったく変わるからです。

手取り30万円の家計にとっての20万円と、手取り50万円の家計にとっての20万円では、残るお金の余裕が大きく違います。
つまり、固定費は金額単体で「高い」「安い」を判断できる数字ではなく、収入との関係で見て初めて意味を持つ数字だということです。

なぜ金額だけでは判断できないのか

ここでは、家賃・住宅ローン・保険料・通信費など、毎月継続的に発生し、すぐには減らしにくい支出を固定費として考えます。

手取りに対する割合が違えば、負担の重さも違う

同じ20万円でも、手取り30万円なら固定費比率は約67%、手取り50万円なら40%になります。
数字にすると、負担の違いが見えやすくなります。

まず割合で見る、というのはこのためです。

固定費は、来月すぐには減らせないことが多い

食費や娯楽費といった変動費は、今月使いすぎたら来月控える、という調整がしやすい支出です。
一方で、家賃、住宅ローン、保険料、通信契約などの固定費は、契約や住み替えといった手続きを挟まないと変えられないものがほとんどです。

そのため、固定費が家計全体に占める割合が大きいほど、収入が減ったときや急な出費が重なったときに、家計を動かせる余地が狭くなります。
固定費が「悪い」というより、身動きの取りやすさに関わる支出だ、という理解のほうが実態に近いはずです。

割合が同じでも、必要な余力は家庭によって違う

ここでもう一段階、注意が必要です。固定費比率が同じ50%だったとしても、

  • 子どもの教育費がこれから増える予定がある
  • 車が生活に必須で、維持費や買い替えが控えている
  • 持病があり医療費がかさみやすい
  • 数年以内に住宅購入や転職を考えている

といった条件によって、残しておきたい余力の大きさは変わります。
逆に、これらの支出予定が少ない家庭であれば、固定費比率が高めでも、実生活で困っている実感がない場合もあります。

したがって、固定費を見るときは、

金額 → 手取りに対する割合 → 固定費を払ったあとに残る余力

という順番で確認していくことになります。
どこか一段階だけを見て「安全」「危険」と決めるのは、どうしても無理が出ます。

具体的な数字で確認してみる

架空の二つの家計で比較してみます。

家計A

  • 手取り:30万円
  • 固定費:18万円
  • 固定費比率:60%
  • 固定費を払ったあとに残る額:12万円

家計B

  • 手取り:50万円
  • 固定費:25万円
  • 固定費比率:50%
  • 固定費を払ったあとに残る額:25万円

固定費の金額だけを比べると、家計Bのほうが5万円多く払っています。
しかし、固定費を払ったあとに残る額は、家計Aが12万円、家計Bが25万円です。
金額の大きさだけを見て「家計Bのほうが危険」とは言えないことが分かります。

自分の家計で確認したい場合の計算式は次のとおりです。

固定費比率 = 毎月の固定費 ÷ 手取り月収 × 100

割合を出したら、そこで終わりにせず、固定費を引いた残りの金額を、次の4つに分けて見てみます。

  1. 食費や日用品など、日常生活にかかるお金
  2. 冠婚葬祭や家電の故障など、不定期に発生する支出への備え
  3. 貯蓄や将来のために回すお金
  4. 特に使い道を決めていない、自由に使えるお金

このうち、2の「不定期な支出への備え」が毎回ギリギリになっている、あるいは3の「将来のためのお金」がまったく確保できていない、という状態が続いているなら、固定費比率の数字がどうであれ、一度見直しを検討する材料になります。

逆に、4つとも無理なく確保できているなら、比率だけを見て焦る必要はありません。

なお、ここで挙げた60%や50%という数字は、あくまで例として計算方法を示すためのものです。
「何%以下なら安全」という基準として使えるものではなく、家族構成や今後の予定によって、無理のない比率は家庭ごとに変わります。

固定費を減らすことより、見ておきたいこと

固定費の見直しというと、「削れるところは削るべき」という話になりがちです。
ですが、家計心理として大事にしたいのは、削ることそのものより、

固定費によって、これからの選択肢が狭くなっていないか

という視点です。

たとえば、住宅ローンや保険料が多少高くても、それが「この家に長く住みたい」「万一のときに家族を守りたい」という、自分たちが選んで決めた支出であり、なおかつ払ったあとの生活にも無理がないなら、金額の大小だけで問題視する必要はありません。

反対に、固定費比率自体はそれほど高くなくても、払ったあとに毎月ギリギリで、貯蓄も突発的な支出への備えもできていない状態が続いているなら、それは「固定費が高いかどうか」より先に、家計の余力そのものが不足しているサインです。

「固定費はいくらまでなら大丈夫か」という数字を知りたくなるのは、数字そのものが欲しいというより、「この家計で大丈夫」と思える基準が欲しいからかもしれません。
ただ、その基準を一つの数字だけに預けてしまうと、その数字を超えた瞬間にまた不安になる、ということも起こりえます。

「固定費は○万円までなら安心」という一つの答えを探すより、

  • 手取りに対してどれくらいの割合を固定費が占めているか
  • そのあとに、生活費・備え・貯蓄・自由に使えるお金がそれぞれ確保できているか

の2点を、自分の家計に当てはめて確認してみてください。そこまで見えると、「平均と比べて多いか少ないか」ではなく、「わが家はどこまでなら大丈夫と言えるか」という、自分たちの判断基準に近づけるはずです。