貯蓄率は、手取り収入のうち、どれくらいを貯金や将来のためのお金に回せているかを見る数字です。
よく使われる目安は、手取りの10〜20%です。
手取りが30万円なら、月3万〜6万円。手取りが40万円なら、月4万〜8万円です。
もう少し余裕がある時期なら20〜30%を目指す考え方もあります。
ただし、この数字は採点表ではありません。
10%だからだめ。30%だから安心。そう単純に決められるものではありません。
家計には、家族構成、住居費、教育費、車の有無、地域、働き方、収入の安定性、今抱えている不安があります。
同じ20%でも、無理なく続く家庭もあれば、生活の余白を削りすぎて苦しくなる家庭もあります。
貯蓄率は、高ければ正解の数字ではありません。
自分たちの家計に、どれくらい余白が残っているかを見るための目安です。
この記事では、貯蓄率の計算方法と一般的な目安を整理したうえで、家計心理の視点から「続けられる貯蓄率」を決める方法をまとめます。
貯蓄率の計算式をそろえる
まず、貯蓄率の見方をそろえます。
家計管理で使うなら、次の式が分かりやすいです。
貯蓄率 = その月に貯められたお金 ÷ 手取り収入 × 100
たとえば、手取り収入が30万円で、月3万円を貯められたなら、貯蓄率は10%です。
月6万円なら20%。
月9万円なら30%です。
ここでいう手取り収入は、税金や社会保険料が引かれたあとの、実際に使える収入です。
額面収入で計算すると、自由に使えないお金まで分母に入るため、家計の実感とずれやすくなります。
また、貯蓄には預金だけでなく、将来資金として積み立てているお金も含めて考えると整理しやすくなります。
ただし、近いうちに使う予定のお金まで、全部「増やすためのお金」として扱わないことも大切です。
生活防衛資金、税金、車検、家電の買い替え、冠婚葬祭、帰省、教育費のまとまった支払い。
こうした支出は、月単位の貯蓄率を大きく揺らします。
1か月だけを見て「今月は低い」「今月は高い」と判断するより、3〜6か月平均、できれば年単位で見る方が、家計の実態に近づきます。
一般的な目安は手取り10〜20%。ただし仮置きでいい
貯蓄率の目安として、手取りの10〜20%はよく使われます。
家計に余裕がある時期なら、20〜30%を目指す考え方もあります。
一方で、子育て、住宅ローン、介護、転職、産休・育休、収入減などが重なる時期は、10%でも重く感じることがあります。
ここで大切なのは、目安を「自分たちを責める材料」にしないことです。
目安は、最初に置く仮の線です。
いったん10%で置いてみる。
無理なく続くなら15%へ上げる。
生活が苦しくなるなら5%に下げる。
ボーナスや臨時収入があるなら、月々ではなく年単位で調整する。
このように、貯蓄率は一度決めたら終わりではありません。
家計の時期に合わせて、置き直す数字です。
家計心理で見る、適正な貯蓄率の3つの判断軸
家計心理の視点では、適正な貯蓄率を「何%か」だけでは決めません。
見るのは、次の3つです。
1. 続けられるか
高すぎる貯蓄率は、最初だけ気持ちがよく見えます。
でも、毎月の生活費が足りなくなり、貯蓄用口座から取り崩す状態が続くなら、その率は今の家計には高すぎます。
貯蓄率は、瞬間最大風速ではなく、続けられる線で見る数字です。
月5万円を3か月でやめるより、月2万円を1年続ける方が、家計の安定にはつながりやすくなります。
続けられる率は、低すぎる目標ではありません。
家計を途中で折らないための現実的な線です。
2. 守りたい生活を壊していないか
貯蓄率を上げようとすると、支出を減らす必要があります。
ただ、削ってはいけない支出もあります。
健康を保つ食事。
仕事を続けるための交通費や通信費。
子どもの安心につながる支出。
家族の関係を保つための小さな楽しみ。
休息、睡眠、通院、学び、暮らしの安全。
これらまで削って貯蓄率を上げても、家計は長く安定しません。
数字の上ではよく見えても、生活の土台が削れているなら、見直すべきは貯蓄率の方です。
貯蓄率は、生活を押しつぶしてまで上げる数字ではありません。
守りたい生活を残したうえで、どこまで将来に回せるかを見る数字です。
3. 夫婦で合意できているか
共働き夫婦や家族の家計では、貯蓄率は一人で決める数字ではありません。
片方が「もっと貯めたい」と思い、もう片方が「今の生活も大切にしたい」と感じていることがあります。
このズレを放置すると、貯蓄率は家計管理の数字ではなく、相手を責める材料になってしまいます。
大切なのは、正しい割合を押しつけることではありません。
何のために貯めるのか。
いつまでに、いくら必要なのか。
今の生活で残したい支出は何か。
どこまでなら不安にならずに続けられるか。
この4つを話してから、貯蓄率を置きます。
夫婦で合意できない20%より、合意できる10%の方が、家計の土台になることがあります。
ライフステージ別に、貯蓄率は変わる
貯蓄率は、ずっと同じである必要はありません。
家計には、貯めやすい時期と、貯めにくい時期があります。
独身期や夫婦だけの時期は、住居費や教育費の負担が比較的軽ければ、貯蓄率を上げやすい時期です。
この時期に20%以上を目指せるなら、将来の選択肢を増やしやすくなります。
子育て期や住宅ローン期は、支出が重くなりやすい時期です。
この時期に貯蓄率が下がっても、それだけで家計が失敗しているわけではありません。
教育費、住居費、車、保険、食費、習い事、帰省費。
暮らしに必要な支出が増えているなら、まずは赤字を出さないこと、生活防衛資金を崩しすぎないことを優先します。
子どもの教育費が落ち着いたあとや、ローン負担が軽くなった時期は、再び貯蓄率を上げやすくなります。
貯蓄率は、人生のどの時期にも同じ点数を求める数字ではありません。
今が貯めどきなのか、守りどきなのか、立て直しどきなのかを見るための数字です。
貯蓄率を上げたいときの順番
貯蓄率を上げたいとき、最初に根性で節約しようとすると疲れます。
毎日の買い物を我慢するより、先に支出の構造を見ます。
1. 固定費を見直す
通信費、保険料、サブスク、光熱費、車関連費、住居費。
固定費は一度見直すと、その後も効果が続きます。
とくに、使っていないサブスクや過剰なプランは、生活の満足度を大きく落とさずに下げられることがあります。
ただし、保険、車、住居費のように暮らしの安心や移動に関わるものは、金額だけで判断しない方が安全です。
2. 先取りで貯める
余ったら貯める方法は、感情や疲れに左右されます。
給料が入ったら、先に決めた金額を貯蓄用口座へ移す。
そのうえで、残ったお金で生活する。
この形にすると、毎月「今月はいくら貯めよう」と考える回数が減ります。
判断の回数が減ると、貯蓄率は安定しやすくなります。
3. 目的別に分ける
貯蓄をひとつの口座にまとめると、何のためのお金なのか分からなくなることがあります。
生活防衛資金。
教育費。
住宅関連費。
老後資金。
旅行や家族の楽しみ。
目的を分けると、「使っていいお金」と「残したいお金」の線が見えやすくなります。
貯蓄率を上げることだけに集中すると、お金を使うたびに罪悪感が出ます。
目的別に分けておけば、必要な支出まで悪者にしなくて済みます。
4. 3か月ごとに見直す
貯蓄率は、毎月細かく反省するより、数か月単位で見直す方が続きます。
今月だけ低かったのか。
固定費が上がっているのか。
臨時支出が続いているのか。
収入が一時的に減っているのか。
家族の時期が変わったのか。
理由を見ずに割合だけを見ると、家計は反省会になります。
数字を見るときは、原因と一緒に見ます。
今日できる簡易ワーク
貯蓄率を決めるときは、次の順番で紙に書き出すと整理しやすくなります。
- 先月の手取り収入を書く
- 先月に実際に残ったお金を書く
- 貯蓄率を計算する
- その数字が続けられそうかを確認する
- 守りたい支出を3つ書く
- 減らしても生活に支障が少ない固定費を3つ探す
- 次の3か月だけ試す貯蓄率を決める
ここで決める貯蓄率は、永遠の目標ではありません。
次の3か月だけ試す仮の数字です。
続いたら少し上げる。
苦しくなったら下げる。
生活に大きな変化があれば置き直す。
そのくらいの扱いで十分です。
貯蓄率は、家計を責める点数ではない
貯蓄率を見ると、つい自分たちの家計を採点したくなります。
でも、貯蓄率は家計を責めるための数字ではありません。
今の暮らしに余白があるか。
将来のためのお金を少しずつ残せているか。
貯めることが、家族の関係や生活の安心を壊していないか。
そのための観察指標です。
まずは手取りの10%を仮置きにする。
余裕があれば15%、20%へ上げる。
今が支出の重い時期なら、赤字を止めることや生活防衛資金を守ることを優先する。
大切なのは、世間の平均に追いつくことではありません。
自分たちの生活が続き、守りたいものが残り、夫婦や家族で納得できる線を見つけることです。
貯蓄率は、その線を探すための目安です。
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