共働きで生活費を折半してきた夫婦にとって、産休・育休は家計のルールが最初に揺れるタイミングです。
先に答えを置きます。
収入が変わったら、「50:50を続けるか、やめるか」を決めるのではなく、負担ルールそのものを組み直す時期だと考えてください。
50:50は、ふたりの手取りや使える時間が近かったからこそ、うまく回っていた設計です。
前提が変われば、同じルールでも片方の手元に残るお金が極端に減ったり、どちらか一方だけに「なんとなくの不公平感」がたまったりします。
これはどちらかの性格の問題ではなく、ルールと状況がずれているだけです。
この記事では、次の順で整理します。
- 見直しの前に確認しておきたい数字
- 50:50以外の分担方法(手取り比率・固定額+共通口座・費目分担・時間負担を含めた調整)
- 仮の世帯で、それぞれの方法を試算した比較
- 見直すタイミングと、夫婦でそのまま使える確認リスト
50:50のままだと負担感がずれやすい理由
手取りは「下がる」だけでなく「形」も変わる
産休・育休中は、給与の代わりに公的な給付が入るのが一般的です。
ただし、給与と同じ感覚では扱えません。
2026年9月時点で厚生労働省・協会けんぽ等が公表している仕組みの概要は、次のとおりです。
| 期間 | 主な給付 | 概要 |
|---|---|---|
| 産前・産後休業 | 出産手当金(健康保険) | 1日あたり、原則として支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均額を30で割った額の3分の2相当 |
| 育児休業(開始〜180日) | 育児休業給付金(雇用保険) | 休業開始時賃金日額の67% |
| 育児休業(181日目以降) | 育児休業給付金 | 休業開始時賃金日額の50% |
| 出生後の一定期間 | 出生後休業支援給付金 | 夫婦ともに一定期間内に通算14日以上の育休を取るなどの要件を満たすと、最大28日間、13%が上乗せ |
| 時短勤務の復職後 | 育児時短就業給付金 | 2歳未満の子を育てるための時短勤務で賃金が下がった場合、一定の要件のもと時短中の賃金の最大10% |
育児休業中は、申出により健康保険・厚生年金保険の保険料が免除され、育児休業等給付は非課税です。
そのため厚生労働省は、67%+13%=80%の給付率になる期間について「手取り10割相当」と説明しています。
一方で、家計の数字として押さえておきたい点もあります。
- 給付には上限額があり、給与が高いほど「67%」より実際の比率は低くなる(上限額は毎年8月に改定されます)
- 育児休業給付金は原則として2か月に一度支給申請を行う(本人が希望すれば1か月ごとの申請も可能)。いずれにしても、給与日とは異なるタイミングで、申請・審査を経てから入金される
- 住民税は前年の所得に対してかかるため、休業中でも支払いが続く
- 181日目以降は給付率が50%に下がる
支給率・上限額・対象条件は、雇用保険や健康保険の加入状況、休業の取り方によって変わります。
わが家の金額は、勤務先の人事・労務担当、ハローワーク、加入している健康保険の公式情報で確認してください。
ここで言いたいのは、「給付があるから大丈夫」でも「収入が大幅に減るから大変」でもなく、入金額・入金時期・期間が変わるということです。
50:50のルールは、毎月同じ額が同じタイミングで入る前提でつくられていることが多く、そこが最初にずれます。
時間の配分も変わる
収入と同時に、家事・育児に使う時間も大きく動きます。
休業中の側が日中の育児を担い、働いている側は帰宅後や休日に担う、という形になる家庭が多いでしょう。
ここで注意したいのは、家事・育児の時間を「時給換算して金額と相殺する」必要はないということです。
換算しはじめると、「夜泣き対応は何円分か」という議論になり、かえって話がこじれます。
時間負担は、金額と同じ土俵に乗せるのではなく、「どの分担方法を選ぶかの判断条件」として扱うほうが実務的です。
固定費は、収入が減っても減らない
家賃・住宅ローン、通信費、保険料といった固定費は、収入が下がっても同じ額が出ていきます。
むしろ出産前後は、おむつ・ミルク・日用品などで生活費が増えることが多く、復職すると保育料が新しい固定費として加わります。
固定費を「金額」ではなく「手取りに占める割合」と「残る余力」で見る考え方は、既存記事で詳しく整理しています。
今回は、その固定費をふたりでどう分けるかに絞って進めます。
→ 固定費はいくらまでなら安心?——金額ではなく「手取りに占める割合」と家計の余力で考える
「一時的な変化」か「続く変化」かで、ルールの寿命が変わる
産休・育休による収入減は、多くの場合、期間の見通しがある変化です。
一方、復職後の時短勤務や働き方の変更は、数年単位で続くこともあります。
- 一時的な変化なら「期間限定ルール」で乗り切る
- 続く変化なら「新しい標準ルール」をつくる
どちらとして扱うかで、選ぶべき方法が変わります。
ここを決めないまま話し合うと、「いつまでこの負担が続くの?」という不安が、どちらの側にも残ります。
数字としての負担と、「不公平だ」と感じる気持ちは別に置く
収入が変わると、感情も動きます。
収入が下がった側には、「自分の自由に使えるお金がほとんどない」「相手に多く出してもらうのが申し訳ない」という気持ちが出やすくなります。
収入が変わらない側には、「自分の負担だけが増えていく」「自分の貯金が減っていく」という気持ちが出やすくなります。
どちらの気持ちも、自然なものです。否定する必要はありません。
ただし、「不公平だと感じる」ことと、「数字として負担が偏っている」ことは、同じではありません。
- 実際に片方の手元残高が生活できない水準になっているのか
- 数字の上ではそこまで偏っていないが、ルールを決めていないことがモヤモヤを生んでいるのか
この2つは、対処の仕方が違います。
前者なら負担割合を変える必要があり、後者なら「いつまで・どこまで」を決めるだけで気持ちが落ち着くこともあります。
だからこそ、まず数字を並べます。
仮の共働き世帯で比べてみる
ここからは、仮の世帯で試算します。
実在の家庭の事例ではなく、考え方を確認するための設定です。
金額は計算しやすいよう丸めています。
設定
- Aさん:手取り月32万円(働き方は変わらない)
- Bさん:手取り月28万円(額面月35万円程度)→ 産休・育休を取得し、その後時短勤務で復職予定
- 共通の生活費:出産前は月30万円(住居費・食費・光熱費・通信費・日用品・保険など)
- 出産後は子どもの費用が加わり月32万円、復職後は保育料(仮に月3万円)が加わり月35万円
保育料は自治体や世帯の所得、子どもの年齢によって大きく異なります。
3万円はあくまで試算用の仮置きです。
育休中のBさんの入金は、仮に次のように置きます(上限額や個別条件によって変わります)。
- 育休開始〜180日:月およそ23万円(額面35万円×67%。非課税・社会保険料免除)
- 181日目以降:月およそ17.5万円(額面35万円×50%)
- 時短で復職後:手取り月22万円(時短による減額と、育児時短就業給付金を含めた仮の額)
① 50:50の固定折半を続けた場合
| 時期 | 生活費 | Aさん負担 | Bさん負担 | Aさんの手元残り | Bさんの手元残り |
|---|---|---|---|---|---|
| 出産前 | 30万円 | 15万円 | 15万円 | 17万円 | 13万円 |
| 育休(〜180日) | 32万円 | 16万円 | 16万円 | 16万円 | 7万円 |
| 育休(181日〜) | 32万円 | 16万円 | 16万円 | 16万円 | 1.5万円 |
| 時短復職後 | 35万円 | 17.5万円 | 17.5万円 | 14.5万円 | 4.5万円 |
育休の後半になると、Bさんの手元に残るのは月1.5万円です。
ここから共通生活費に含めていない住民税や個人の支出を払えば、使える余力はさらに小さくなります。
この数字を見て「Bさんの貯金を取り崩せばいい」と考える家庭もあるでしょう。
それも一つの選択です。
ただ、その場合は「世帯として取り崩している」のか「Bさん個人が取り崩している」のかを決めておかないと、復職後に「私の貯金だけ減った」という不満として残りやすくなります。
使いやすい家庭: 収入差が小さく休業期間も短いため、50:50でも双方の手元資金に無理がない。
取り崩しが必要な場合も、世帯資金・個人資金のどちらから出すか合意できている。
② 手取り収入比率で分担した場合
生活費を、ふたりの手取りの比率で分けます。
ここでは、給与の手取り額と育休給付の月換算額を、どちらも「家計に入る実額」として比率を計算します。
| 時期 | 手取り比率(A:B) | Aさん負担 | Bさん負担 | Aさんの手元残り | Bさんの手元残り |
|---|---|---|---|---|---|
| 出産前 | 53:47 | 16万円 | 14万円 | 16万円 | 14万円 |
| 育休(〜180日) | 58:42 | 18.6万円 | 13.4万円 | 13.4万円 | 9.6万円 |
| 育休(181日〜) | 65:35 | 20.7万円 | 11.3万円 | 11.3万円 | 6.2万円 |
| 時短復職後 | 59:41 | 20.7万円 | 14.3万円 | 11.3万円 | 7.7万円 |
手取りが変わるたびに負担額が自動で調整されるので、片方の手元だけが極端に薄くなるのを防げます。
一方で、給付は給与と入金のタイミングが異なるため、「今月入ったお金」をそのまま使うと毎月の計算がぶれます。
給付額は対象期間の支給額を月あたりに直して比率を計算するなど、計算方法も決めておくと運用しやすくなります。
使いやすい家庭: 収入差が大きい、または収入の変化が何段階も続く。計算を毎回するより「比率を決めておく」ほうが話し合いやすい。
③ 固定額を共通口座に入れる場合
それぞれが決まった額を共通口座に入れ、生活費はそこから払います。
たとえば育休中は次のように設定します。
- Aさん:月20万円を入金
- Bさん:月12万円を入金
- 合計32万円で生活費をまかなう
このとき、Aさんの手元は12万円、Bさんの手元は育休前半で11万円、後半で5.5万円です。
入金額を「比率」ではなく「話し合って決めた金額」にするので、「Bさんの手元に最低5万円は残す」「Aさんの貯蓄は月5万円までは維持する」といった条件を組み込みやすいのが特徴です。
使いやすい家庭: 毎月の計算を減らしたい。お互いの「最低限残したい額」がはっきりしている。
④ 費目ごとに担当を分ける場合
たとえば「住居費と光熱費はAさん、食費と日用品はBさん」のように、費目で分けます。
分かりやすい反面、収入が変わったときに調整しにくい方法です。子どもの費用が増えると、日用品を担当している側の負担だけが膨らむ、ということも起こります。
使いやすい家庭: 収入差が小さく、支出の変動も少ない時期。産休・育休中に使うなら、③の共通口座と組み合わせ、「変動しやすい費目は共通口座から払う」とするほうが無理が出にくくなります。
⑤ 家事・育児の時間負担も含めて調整する考え方
これは①〜④と並ぶ独立した方法というより、どの方法を選ぶかを決めるときの判断条件です。
たとえば、
- 育休中の側が日中の育児・家事の大半を担っている
- 復職後、時短勤務の側がお迎えや通院対応を主に担う予定
という場合、「時間を多く出している側に、お金の負担まで同じ割合で求めるか」を話し合う意味があります。
ここでも、時間を金額に換算する必要はありません。
「時間の負担が偏っている期間は、お金の負担は手取り比率より少し軽くする」「逆に時間負担が均等に近づいたら、比率に戻す」といった調整の方向だけ決めておけば十分です。
どの方法が「正解」かではなく、どの条件ならどれが使いやすいか
| 家庭の状態 | 使いやすい方法 |
|---|---|
| 収入差が小さく、休業期間も短い | 50:50の継続(期間限定で取り崩しルールを決める) |
| 収入差が大きく、変化が何段階も続く | 手取り比率 |
| 毎月の計算を減らしたい/最低限残したい額がはっきりしている | 固定額+共通口座 |
| 支出の変動が少なく、担当を分けたほうが管理しやすい | 費目分担(共通口座と併用) |
| 時間負担の偏りが大きい期間がある | 上記いずれかに「時間負担による調整」を加える |
同じ家庭でも、育休中と復職後で合う方法が変わることはよくあります。
「育休中は固定額+共通口座、復職後は手取り比率」のように、時期ごとに方法を切り替えるのも一つの設計です。
見直すタイミングは「一度」ではなく「変化のたび」
負担ルールは一度決めて終わりではありません。状況が変わるたびに、数字を見直す前提でつくります。
| タイミング | 確認すること |
|---|---|
| 産休・育休に入る前 | 休業中の入金見込み、初回入金までの資金繰り、期間限定ルールの内容 |
| 実際の給付・手取りが見えたとき | 見込みとの差、ルールをそのまま続けられるか |
| 181日目前後(育休が長い場合) | 給付率が下がった後の手元残り |
| 復職前 | 保育料・時短後の手取り見込み、新しいルールの候補 |
| 時短勤務開始後 | 実際の手取り、時間負担の変化 |
| 保育料など新しい固定費が発生したとき | 共通の生活費の総額 |
| 収入や働き方が再び変わったとき | ルールの前提がまだ合っているか |
特に見落としやすいのが、休業に入ってから初回の給付が入るまでの期間です。
給与が止まり、給付はまだ入っていない数か月をどちらの貯蓄でつなぐのかは、休業前に決めておくと安心です。
夫婦でそのまま使える確認リスト
話し合いのときは、「どちらが多く払うべきか」から始めず、次の項目を上から順に埋めていくと進めやすくなります。
数字を並べる
- [ ] 現在のそれぞれの手取りはいくらか
- [ ] 産休・育休中に見込める入金はいくらか(入金時期も含めて)
- [ ] 世帯の固定費と、共通の生活費はいくらか
- [ ] 生活費以外に、それぞれが個人で負担している費用は何か(住民税、個人の保険料、奨学金返済など)
金額以外の負担を整理する
- [ ] 家事・育児の時間負担は、休業中と復職後でどう変わるか
判断の基準を決める
- [ ] それぞれの手元に、毎月最低いくら残れば安心か
- [ ] 世帯の貯蓄をどこまで維持したいか(取り崩す場合、世帯として取り崩すのか、個人として取り崩すのか)
ルールの期限を決める
- [ ] この負担ルールを、いつまで使うか
- [ ] 次に見直す日をいつにするか(日付で決める)
よくある疑問
育休中は、貯金を止めてもいいですか?
家計に無理が出ない範囲なら、育休中だけ積立や貯金を一時的に減らす・止める選択肢はあります。
そのうえで、「どこまでなら減ってもいいか」を先に決めておくと判断しやすくなります。
たとえば「生活防衛資金として生活費の○か月分は残す」「それを下回りそうなら積立額を減らす」と線を引いておけば、毎月悩まずに済みます。
復職したら、すぐ50:50に戻すべきですか?
戻す必要はありません。
復職後も時短勤務で手取りが以前より少ない、保育料が増えた、時間負担の偏りが続いている、という状態なら、元の50:50の前提はまだ戻っていません。
「フルタイムに戻ったら」「子どもが○歳になったら」など、戻す条件を決めておくほうが揉めにくくなります。
片方が「折半のままでいい」と言う場合は?
本人が納得していても、数字を並べてから決めることをおすすめします。
上の試算のように、育休後半は手元に残る額が想像以上に少なくなることがあります。
数字を見たうえで「それでも折半にする、その代わり貯蓄の取り崩しはここまで」と決めるなら、それはわが家の判断です。
わが家の負担ルールは、この順番で決める
最後に、ここまでの流れを手順にしておきます。
- 今の数字を確認する:休業前後の手取り、入金時期、固定費、個人負担
- 金額以外の負担も整理する:家事・育児の時間がどう変わるか
- 2〜3種類の分担方法で試算する:50:50、手取り比率、固定額+共通口座など
- 一時的なルールか、続くルールかを決める:育休中だけなのか、復職後も使うのか
- 次に見直す日を決める:変化のたびに、数字を並べ直す
50:50が悪いわけでも、手取り比率が正しいわけでもありません。
見るべきなのは、その方法でふたりとも手元にお金が残り、世帯として貯蓄も続けられ、期限も分かっている状態になっているかです。
そこが確認できていれば、選んだ方法は「わが家の基準」として十分に機能します。
そして状況が変わったら、また数字を机に並べるところから始めればいいのです。
参考(2026年9月時点で確認)
- 厚生労働省「育児休業等給付の内容と支給申請手続(令和8年8月1日改訂版)」
- 厚生労働省「育児時短就業給付の内容と支給申請手続(令和8年8月1日時点版)」
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「出産手当金」
※給付の支給率・上限額・対象条件・社会保険料の扱いは、加入している制度や休業の取り方によって異なります。最新の内容と個別の金額は、勤務先、ハローワーク、加入している健康保険の公式情報で確認してください。